「これまでのキャリアを通して、テーラリングにも数多くのトレンドの波が押し寄せてきたのを目撃してきました。ビックショルダー、ビッグラペル、巨大なチェック柄、奇抜な色彩に奇妙なボタンなど、内容も実にさまざまです。」2019年春夏のショーを目前に控えたポールは語ります。
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現れてはすぐに消えていくトレンドを目にしながら、ポール自身は常にテーラリングの妥当性と実用性を信じてきました。ポール・スミスのスーツはクロゼット常備され年に一度の特別な機会にのみ着用されるものではなく、日常で着られることを想定しデザインされています。スポーツウェアがファッションを席巻する時勢にあっても、ポールのテーラリングへの思いは変わることがありません。
「スーツは常にポール・スミスの中心にあり、そのことにとても誇りを持っています。」
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テーラリングと向き合い続けることの理由のひとつには、これまでに生まれたものに新しさを加え、さらに改良したいというポールの願いがあります。2019年春夏シーズンのコレクションは、80年代のジャケットのシルエットを参考に、誇張されたラペルやシルエットがデザインに取り入れられているものの、それらは単なるノスタルジアによるものではありません。
「いくつかのシェイプはかつて流行したスタイルを彷彿とさせるかもしれませんが、仕様は非常にモダンにアップデートされているのです。」
とりわけ生地に関する進化について語る時、ポールの目は一層輝きます。
「かつてのテーラード素材が500gだとしたら、ジャケットはその生地自体の重さにより、自立するほど堅く重量感があるものでした。それが今では半分以下の200g程度に進化しています。そして新しい素材は軽量であるだけでなく、汎用性の高さも兼ね備えているのです。」
今シーズンはまた、新たな手法を取り入れたプリントにもフォーカスを当てています。デザイナーとしてのキャリアをスタートした初期の時代に考案したフォトグラフィックプリントには独自のタッチが加えられており、ポールとポールの父が撮りためた写真のアーカイブから選んだ作品をグラフィックに使用しています。オリジナルの写真の経年変化した色合いをヒントに柔らかなパステルカラーに仕上げたプリントは、メンズではアウターウェア、ウィメンズでは絵画風のプリントで、流れるようなドレスやコートなどにあしらわれています。
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ロンドンの豊かで多種多様な音楽の歴史は、ポール・スミスのコレクションに常にインスピレーションを与えています。2019年春夏シーズンは、カリビアンカルチャーとパンクロックが融合した70、80年代のスカやツートーンムーブメントに影響を受け、チェッカーフラッグ柄がニットやソックスで登場しコレクションにアクセントを加えています。その柄はまた、レースのフィニッシュラインで振られるフラッグも想起させ、カラフルなポルカドット柄のサイクリングジャージとともに、ポールのサイクリングへの情熱も表現しているかのようです。
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ショーが行われたパリのエリゼ・モンマルトルは、かつてデヴィッド・ボウイやダフトパンク、ビョークらがプレイしてきたライブ会場です。音楽と深いつながりを持つ場所を選んだことから、会場周りのいたるところにニューコレクションのプリントのポスターが貼られました。
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ブリティッシュデザインへの賞賛は、シューズやアイウェアにも垣間見ることができます。グッドイヤー・ウェルテッド製法で仕上げたローファーやチェルシーブーツは、プロポーションやシェイプにひねりを加えデザインを誇張することで個性的な仕上がりです。イギリスを代表する老舗眼鏡ブランド、「カトラー アンド グロス」とコラボレートした新たなスペクタクルズコレクションも初披露され (日本発売未定)、そのアイコニックなフレームには、ポール・スミスらしいカラーリングが落とし込まれています。