ポールのカメラコレクション
シリーズ第2弾はポールのカメラコレクションに迫り、父親から受け継いだ写真への情熱について話を聞きました
ポールのオフィスには額縁に入った1枚の写真が飾られています。オフィスにある数多くの写真の中でも特別なものなのだとか。白黒の写真にはストライプのTシャツを着た少年ポールが、ブライトンの象徴であるロイヤル・パビリオンのドーム上空を舞う“空飛ぶ”絨毯の上に座っている姿が写っています。「これはビーストンの家の裏庭で撮ったものです。学校から帰ると、父がラグの端にワイヤーを通して、古い果物箱の上に置いていました。そして『宿題をやる前にそこに座って飛ぶフリをしてくれないかい?』と言ったのです」とポールは説明します。
数週間後、ポールは完成したトリック写真を見せられたのでした。これが現在ロンドンのポールのオフィスに飾られているものです。アマチュア写真家であり、ノッティンガムのビーストン・カメラ・クラブの共同設立者であるポールの父親は、ポールにカメラと写真への情熱を植え付け、11歳の時に最初のカメラをプレゼントした人物です。父親が亡くなった後、ポールは父と共有した情熱を称えるため、2人の写真を収めた限定本「Father & Son」を出版しました。「父は構図や光、ウィットに富んだ被写体の並置などに実験的に取り組んでいました。また、写真を撮るだけでなく、屋根裏に設けた手作りの暗室ですべての作品の現像とプリントをしていました」とポールは本に記しています。
それから数十年、数え切れないほどのカメラと出会いましたが、ポールは今も変わらず写真に情熱を注いでいます。Office Sundaysシリーズ第二弾として、その充実したコレクションとポールのお気に入りの5 つのカメラにまつわるストーリーをご紹介しましょう。
シリーズ第2弾はポールのカメラコレクションに迫り、父親から受け継いだ写真への情熱について話を聞きました
ポールのオフィスには額縁に入った1枚の写真が飾られています。オフィスにある数多くの写真の中でも特別なものなのだとか。白黒の写真にはストライプのTシャツを着た少年ポールが、ブライトンの象徴であるロイヤル・パビリオンのドーム上空を舞う“空飛ぶ”絨毯の上に座っている姿が写っています。「これはビーストンの家の裏庭で撮ったものです。学校から帰ると、父がラグの端にワイヤーを通して、古い果物箱の上に置いていました。そして『宿題をやる前にそこに座って飛ぶフリをしてくれないかい?』と言ったのです」とポールは説明します。
数週間後、ポールは完成したトリック写真を見せられたのでした。これが現在ロンドンのポールのオフィスに飾られているものです。アマチュア写真家であり、ノッティンガムのビーストン・カメラ・クラブの共同設立者であるポールの父親は、ポールにカメラと写真への情熱を植え付け、11歳の時に最初のカメラをプレゼントした人物です。父親が亡くなった後、ポールは父と共有した情熱を称えるため、2人の写真を収めた限定本「Father & Son」を出版しました。「父は構図や光、ウィットに富んだ被写体の並置などに実験的に取り組んでいました。また、写真を撮るだけでなく、屋根裏に設けた手作りの暗室ですべての作品の現像とプリントをしていました」とポールは本に記しています。
それから数十年、数え切れないほどのカメラと出会いましたが、ポールは今も変わらず写真に情熱を注いでいます。Office Sundaysシリーズ第二弾として、その充実したコレクションとポールのお気に入りの5 つのカメラにまつわるストーリーをご紹介しましょう。
史上最も象徴的なカメラのひとつとされているこのローライフレックスは、「空飛ぶ絨毯」の写真のようなトリック写真を撮影するのが好きだったポールの父、ハロルド・スミスが所有していたものです。1958年に作られたモデルで、ポールのコレクションの中でも最も大切なカメラのひとつです。ポールが写真やカメラに対する情熱を育んだのは、このカメラがあってこそ。「写真の世界に足を踏み入れたのは父の影響です」とポールは説明します。
史上最も象徴的なカメラのひとつとされているこのローライフレックスは、「空飛ぶ絨毯」の写真のようなトリック写真を撮影するのが好きだったポールの父、ハロルド・スミスが所有していたものです。1958年に作られたモデルで、ポールのコレクションの中でも最も大切なカメラのひとつです。ポールが写真やカメラに対する情熱を育んだのは、このカメラがあってこそ。「写真の世界に足を踏み入れたのは父の影響です」とポールは説明します。
ポールが所有するいくつもの日本製カメラのうちのひとつ、リコーオートハーフは、1960年から1963年の3年間という短い期間しか生産されませんでしたが、そのルックスとコンパクトさ、シンプルな操作性から、1970年代にはリバイバル版が続々と登場しました。このE2モデルはレトロなバーントオレンジ色のフェイスが特徴です。ポールが古いカメラを愛用している理由のひとつとして、じっくりと “見る”(look)だけでなく自然と視界に入ってくるものを “見る”(see)ことも重要な点だということがあります。「最近ではスマートフォンで写真を撮るとき、ボタンを40回押して39枚を消すだけです。でもフィルムカメラの場合、より観察力が必要とされます。私は父から写真の構図を教わったからか、まわりをもっと “観察”するようになりました」とポールは説明します。
ポールが所有するいくつもの日本製カメラのうちのひとつ、リコーオートハーフは、1960年から1963年の3年間という短い期間しか生産されませんでしたが、そのルックスとコンパクトさ、シンプルな操作性から、1970年代にはリバイバル版が続々と登場しました。このE2モデルはレトロなバーントオレンジ色のフェイスが特徴です。ポールが古いカメラを愛用している理由のひとつとして、じっくりと “見る”(look)だけでなく自然と視界に入ってくるものを “見る”(see)ことも重要な点だということがあります。「最近ではスマートフォンで写真を撮るとき、ボタンを40回押して39枚を消すだけです。でもフィルムカメラの場合、より観察力が必要とされます。私は父から写真の構図を教わったからか、まわりをもっと “観察”するようになりました」とポールは説明します。
写真史上最も人気のあるカメラのひとつであるC3は、1939年から1966年までミシガン州アナーバーで生産されたアイコニックなモデルです。その販売台数はなんと220万台。Gustave Fassin(ギュスターヴ・ファサン)によってデザインされ、独特の角ばった形と重量感のある構造から、親しみを込めて「ブリック」と呼ばれるようになりました。大衆向けに開発されたアーガスC3の大きな魅力は、少なからずその“科学的”なルックスと雰囲気にありました。また、一見重そうなこのカメラは戦場の最前線で戦う兵士を撮影し、戦争の悲惨さを描いて賞賛された第二次世界大戦の伝説的な写真家トニー・ヴァッカーロの愛機でもありました。
写真史上最も人気のあるカメラのひとつであるC3は、1939年から1966年までミシガン州アナーバーで生産されたアイコニックなモデルです。その販売台数はなんと220万台。Gustave Fassin(ギュスターヴ・ファサン)によってデザインされ、独特の角ばった形と重量感のある構造から、親しみを込めて「ブリック」と呼ばれるようになりました。大衆向けに開発されたアーガスC3の大きな魅力は、少なからずその“科学的”なルックスと雰囲気にありました。また、一見重そうなこのカメラは戦場の最前線で戦う兵士を撮影し、戦争の悲惨さを描いて賞賛された第二次世界大戦の伝説的な写真家トニー・ヴァッカーロの愛機でもありました。
1988年に発売されたこのカメラはポールのコレクションの中でも新しい部類に入りますが、そのデザインは当時としては実にユニークなものでした。オリンパス「O・product」は、幾度もの日本への旅の中でポールが知り合うことになる坂井直樹によって考案されたもので、新旧を大胆に融合し、当時爆発的に流行したノスタルジーとレトロフューチャーなデザインを先取りしていました。1980年代後半に主流だったプラスティック製のカメラとは異なり、オールアルミ製のボディと取り外し可能なフラッシュマウントを備え、往年のプレスカメラを彷彿させます。そして、内側にもサプライズがあり、裏蓋を開けるとオリンパスからのメッセージが迎えてくれます:“A new concept in product design. Olympus O-Product. Functional imperatives molded to artistic form. A camera shaped with simple lines, elegant contours”(新しいコンセプトのプロダクトデザイン、オリンパス「O・product」。機能性の追求が芸術的なフォルムに。シンプルなラインとエレガントなシルエットのカメラ)
1988年に発売されたこのカメラはポールのコレクションの中でも新しい部類に入りますが、そのデザインは当時としては実にユニークなものでした。オリンパス「O・product」は、幾度もの日本への旅の中でポールが知り合うことになる坂井直樹によって考案されたもので、新旧を大胆に融合し、当時爆発的に流行したノスタルジーとレトロフューチャーなデザインを先取りしていました。1980年代後半に主流だったプラスティック製のカメラとは異なり、オールアルミ製のボディと取り外し可能なフラッシュマウントを備え、往年のプレスカメラを彷彿させます。そして、内側にもサプライズがあり、裏蓋を開けるとオリンパスからのメッセージが迎えてくれます:“A new concept in product design. Olympus O-Product. Functional imperatives molded to artistic form. A camera shaped with simple lines, elegant contours”(新しいコンセプトのプロダクトデザイン、オリンパス「O・product」。機能性の追求が芸術的なフォルムに。シンプルなラインとエレガントなシルエットのカメラ)
次にご紹介するのは、珍しいフランス生まれのカメラ。パリのガルス社で製造されたDerlux(旧称Derby-Lux)は、ポールのお気に入りのポイントでもある、オールアルミ製ダイキャストのユニークなボディが印象的なアイテムです。しかし、この一風変わったデザインは、戦時中から戦後にかけての原材料の不足により、鉄や鋼が不足したため、必要に迫られて生まれたものでした。宇宙時代とアールデコを同時に表現したこの製品は、ポールのコレクションの中でも最も印象的なアイテムのひとつです。
次にご紹介するのは、珍しいフランス生まれのカメラ。パリのガルス社で製造されたDerlux(旧称Derby-Lux)は、ポールのお気に入りのポイントでもある、オールアルミ製ダイキャストのユニークなボディが印象的なアイテムです。しかし、この一風変わったデザインは、戦時中から戦後にかけての原材料の不足により、鉄や鋼が不足したため、必要に迫られて生まれたものでした。宇宙時代とアールデコを同時に表現したこの製品は、ポールのコレクションの中でも最も印象的なアイテムのひとつです。
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