この真っ赤なレーシングカーをどこで手に入れたか、ポールは残念ながら正確には覚えていないそうですが、おそらくノッティング・ヒルだろうとのこと。「ポートベローロードがもっとアンティーク品で溢れていた頃、ひとりの店主からずいぶんいろいろなものを買いました。残念なことに、今のポートベローロードはかなり商業的で、土産物などさまざまなものが売られていますが、かつてはただアンティーク品を売っている通りでした。何か探し求めているときに行く場所だったのです。お宝を確保するためには朝5時に行かないとなりませんでしたけどね」とポールは語ります。

ブリキのおもちゃについてポールが最も気に入っていることのひとつは、一見シンプルに見えるものの、とても洗練されている点です。例えば、ぜんまい仕掛けのホテルのポーター。「多くは中国かドイツで作られたもので、その創造性には魅了されます。荒削りに見えるものの、すべてのパーツが可動式で、考えてみればとても複雑な作りになっているのです」とポールは語ります。

ポールのオフィスにある多くのオブジェ、アート、本と同様、このおもちゃの潜水艦（動くプロペラ付き）もまた友人からの贈り物です。2019年までアップルの最高デザイン責任者を務め、現在はロイヤル・カレッジ・オブ・アートの学長を務めるサー・ジョニー・アイブから（ブリキの飛行機と一緒に）ポールに贈られました。「私はこのように使ったことはないのですが、お風呂や池など水に入れることができます」とポールは説明します。

ホテルのポーターや潜水艦のように、アイスクリーム屋さんもまた動くおもちゃです。ネジを巻くと、昔ながらのアイスクリーム屋さんのように鐘を鳴らします。「5歳や10歳の子どもにとってこのようなおもちゃは今でも面白いのか、肩越しに見てみたいですね。私自身はこれで遊んだことはなく、オフィスにある多くのものと同じように、単に視覚的なオブジェとして気に入っています。デザイナーとして、なぜ、そしてどのようにして、ものが作られたのかに興味があるのです」

ミニチュアの食料品店がポールに魅力的に映るのは想像に難くありません。というのも、ポールはショップマネージャーとしてキャリアをスタートさせ、今でも自身をショップマネージャーだと思っているのですから。昔ながらの店内のイラストが描かれ、過ぎ去った時代のもののように感じられるかもしれませんが、今日でも子どもたちが遊んでいるような、ミニチュアのキッチンや作り物の果物や野菜でいっぱいのスーパーマーケットのおもちゃとそれほど違いはありません。「いろいろな形やサイズのおもちゃをたくさん持っています。でもブリキのおもちゃは作り方が面白いのです」とポールは語ります。